* (注) 掲載写真は1947年当時のもので、現在のものではありません。

 

当園に残されている古い書籍のご紹介

こちらは日本香料協会というところが出していた、いわゆる「業界誌」です。第1号は昭和22年10月発行とあるので、戦後すぐに創刊されたことがわかります。あいにく当園には全号はそろっていませんでしたが、それでも年代順に見ていくと、昭和20年代は主に天然香料についての記事が多く、30年代に入ると合成香料の記事が徐々に増えていきます。この雑誌を見るだけでも、天然香料産業が衰退していく様子が見てとれます。化学技術の進歩で安く大量生産できるようになったことは、当時としては画期的な事だったのでしょう。

ところであまり知られていませんが、戦前、日本の天然香料の生産量はすさまじく、この雑誌によると、昭和13年には天然香料生産高の1位と3位は日本となっています。1位は樟脳で、3位はハッカです。特にハッカは品質がすばらしかったそうです。また、樟脳は江戸時代から薩摩藩で作られていて、当時からヨーロッパへ輸出されていました。藩の財政を支えていたのはこの樟脳なのです。香りも歴史に深く関わっていたことがよく分かります。

この雑誌は、香料専門誌だけあって「香りの付録」がついています。小さな賦香紙に香りをつけて目次のところに貼り付けてありました。さすがに70年近くたってるいので匂いは全くありませんが、当時の人はこの雑誌を開いた時に、きっと香りも楽しんでいたのでしょう。実はこの雑誌、なんと鹿児島大学の図書館にほぼ全巻そろっています。学生以外も入館できますので興味のある方は行かれてみてはいかがでしょうか。他にも興味深い書籍・雑誌がたくさんありますよ。

文 : 宮崎 利樹 / 開聞山麓香料園 副園長

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