40年前の香り

当園の初代園長・宮崎巌は香りに魅せられ、香りに生涯をささげた人でした。もう亡くなって20年以上経ちますが、最後まで香り良きハーブの栽培に力を注いでおりました。天然香料の需要が途絶えた昭和50年頃以降も、細々ながら実験的に蒸留を続けていました。その頃に蒸留していた精油が保管庫の中に実はまだ眠っています。精油としては、もうすっかり使い物にならないほど古くなっているのですが、処分するのが忍びなく今に至っています。

先日の事、この保管庫を開けてみることにしました。中に入っていたのはおなじみの芳樟、レモングラス、ローズ・ゼラニュームだけでなく、タイムやバジル、セイジなどもありました。恐る恐るフタを開けて香りを嗅いでみると・・・ 一部をのぞいて、芳醇で奥深い香りがするものがありました。

特にセイジ(コモン・セイジ)は、びっくりするほど深みのある甘さがあり、いつまでも香っていたいほどでした。また、保管庫の中には他社の輸入精油もあり、その中にはブルガリア・ローズやイランイラン、ネロリなどもあり、濃厚な香りを放っていました。

これらの香りの奥深さの中に、それだけの時間の流れを感じずにはおれません。天然香料が途絶えて40年、今また天然の香りの時代が来ようとしています。当時、天然香料の礎を築いた方達も、今また復活しつつある日本の天然香料の広がりを喜んでいるかもしれませんね。

文 : 宮崎 利樹 / 開聞山麓香料園 副園長

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