・講座名 : 第1回シビックカフェ / 香りの歴史
・開催日 : 2016年6月22日(火) / 山川図書館


雨の中お集まりの皆さまありがとうございました。楽しんで頂けましたでしょうか。以下開催報告です。講座では香りの歴史と題して、前半は世界史のお話を、そして後半は指宿・開聞岳の麓にハーブ農園ができたのかというのを日本史を交えながらお話ししました。世界史と日本史に関しましては、参考にさせて頂いた本をお読みいただければと思います。(最後に記載しています)

なお、第2回シビックカフェ「香りの講座」は、7月26日(火)に開聞山麓香料園内のカフェスペースで開催いたします。14時スタートで、「芳樟とクスノキ」についてお話いたします。

 

さて当園の歴史です。ホームページにも少し掲載していますが、そこには創設者の宮崎巌のことからしか書いておりません。実はその先代に話は遡ります。少々長いですがお付き合いくださいませ。創設者宮崎巌の父・宮崎大三郎は、当時福沢諭吉の門下生でした。先生のすすめもあって、欧米視察へ出ます。明治35年のことです。イギリスへ到着した大三郎は、あるものを見てたいへん驚きました。それは「オランジュリー(温室)」です。寒いイギリスでも温室というもので育てればオレンジが実る。このことにとても興味を持った大三郎は、帰国後さっそく自宅の庭に小さなオランジュリーを作り、珍しい植物を育て始めました。当時はチューリップやカトレアなどが多かったそうで、近所の方がオランジュリーを見に来たり、外国帰りの人たちが相談にこられて忙しかったそうです。

このオランジュリーの仕事を、巌は兄の辰夫と一緒に手伝っていました。様々な植物に接するうちに、兄の辰夫は植物全般に興味を持ち、珍しい植物を集めてまわる「プラントハンター」になりました。巌の方は、植物の中でも特に良い香りのするものに魅かれていきます。その良い香りのするものがハーブだったのです。ある日、フランス大使館から珍しい植物を分けてもらえると言われ、巌は大使館まで出かけます。その時に頂いたのが「ローズ・ゼラニューム」というハーブの苗でした。青々と茂った葉からは、バラのような甘い香りが立ちのぼり、帰りの電車の中では乗り合わせた人たちに質問攻めにあったそうです。

ちょうど同じ頃、曽田香料の曽田政治社長は国産の天然香料が作れないかと考えていました。というのも、当時香料はほぼ外国からの輸入品で、中には粗悪品を売りつけてくる業者もあり、質のよい香料を入手するのに苦労していました。また、戦争の機運が高まり外国との貿易が難しくなりつつあり、そのことが国産香料製造へと舵を切らせました。そして香料植物を探していた曽田氏が宮崎家と出会い、ローズ・ゼラニュームから精油の抽出をすることになりました。曽田氏に依頼され、辰夫と巌は栽培適地を探すことになり、寒さに弱いローズ・ゼラニュームを育てるためには霜が降りないことが条件であるため、本土最南端の開聞岳の麓に決めました。昭和16年のことです。

そして、昭和18年にはローズ・ゼラニュームの精油抽出に成功しました。その量は18kgでした・・・。この後の話は、弊社ホームページ「当園の歴史」に書かれておりますのでそちらをご覧くださいませ。

 

次回の香りの講座もぜひご参加くださいませ。お待ちしております。

『参考文献』
・香りへの招待(梅田達也 研成社)
・日本の香り(松栄堂監修 平凡社)
・香りと文明(奥田治 講談社サイエンティフィク)
・アローマ(コンスタンス クラッセン 筑摩書房)
・香料植物(吉竹利文 法政大学出版局)
・香料植物の図鑑(フレディ・ゴズラン 原書房)

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